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2020/01/29

『1ON1』廃止の真相に迫る


おはようございます。
鈴木 裕詠(ゆうた)です。

2020年1月、ビースタイルは約3年間続けた
『1ON1ミーティング』という、社内制度を廃止しました。

※1ON1ミーティング(以下1ON1)とは、上司と部下が1対1で行う対話のことで、
評価面談とは違い、短期的なスパン(ビースタイルでは1~2週間に1回)で継続的に
『部下の育成』を目的として行う。

ビースタイルは、なぜ1ON1を導入し、そして廃止に至ったのか。
人事担当役員 百瀬へのインタビュー形式で、紐解いていきます。

[今回の調査対象]

百瀬 愛子ビースタイルの人事担当執行役員。
キャビンアテンダント⇒大学で行動分析学を学び⇒大手人材企業を経てビースタイルに入社。
全社横断の業務改革、ブランド企画、事業部責任者を経て、人事責任者には2年前から着任。
小学4年生の娘の母。健康的生活と漫画が好物。

 

1.『1ON1』の導入経緯を探る

鈴木 お疲れ様です!今日は、よろしくお願いします!
百瀬 よろしくね。実は、今日取材があるのをすっかり忘れてて、
かなりラフな格好で来ちゃった(笑)
鈴木 たしかに。でも大丈夫ですよ、僕もかなりラフな格好ですので。
(休日に購入した新しいニット。個人的には「銀鮭みたいだな」と思っています。)

 

『1ON1』みたいなことは、導入前から行っていた。

鈴木 まず、1ON1の導入に至った経緯をお聞きしたいです。
百瀬 実は1ON1という面談形式が話題になる前、2014年くらいから
それっぽいことはやっていたんですよ。
とはいっても、当時自分が関わっていた事業部門内で
マネージャー職をやっている、3~4人の社員向けになんですけどね。
鈴木 具体的には、どんなことを実施していたんですか?
百瀬 当時は、マネージャー陣にブレイクスルーして欲しいという意図で、
週に1回30分ほどの面談を実施していたんです。
話す内容は人それぞれですけど、現状任せている業務の各論というよりは、
もっと本質的な、本人の思考の癖や起こりやすい感情を認識することで、事実のとらえ方や問題解決の進め方を自分で気づいて体得していくことにフォーカスして話をしていました。コーチングですね。

鈴木 なるほど。実施している中で、効果を実感する事はありましたか?
百瀬 そうですね。その当時は、自部門のマネージャーたちが業務上の課題に対して
もやもや悩む時間が短くなったと感じました。
彼らたちが週1回の面談で、自分の思考の癖などを理解し、改善してくれたんだと思います。
鈴木 業務上の課題に対する具体的な解決策を話すのではなく、思考の癖などの
本質的な本人の課題を捉えていくことが、その効果に繋がったんですね。

 

会社全体で『1ON1』を導入する動きへ

鈴木 そこから、全社で『1ON1』という制度を導入するに至った経緯も教えていただきたいです。
百瀬 自部門での実施内容や効果を各役員と話した際に、
他でも同じようなことを実施している部門もあって、
全社的にやってみることになったんです。
鈴木 各部門での成功事例をもとに、全社での導入が決まったわけですね。
百瀬 そうです。1ON1を制度として導入することが決まってからは、
上司側となるマネジメント層に1ON1に関する研修を実施した後、
全社での運用が始まりました。おそらく、2017年ごろだった気がします。
鈴木 因みに、全社での運用が始まるまでに苦労したことは何ですか?
百瀬 社内で1ON1に対する具体的なメソッドがなかったことですね。
役員レベルでは、『社員の育成』を目的に定期的な面談は実施していたものの、
方法には少なからず差がありましたし、『育成』という目的の認識に関しても
それは同様でした。
つまりは、全社運用するに際して、どんな手法・目的が最適か、
大方針がゆるいまま、まずはスタートした、という状況です。
鈴木 なるほど。

 

2.『1ON1』を実際に全社運用してみて

鈴木 次に、実際社内で運用していた時期のお話をお伺いしたいのですが、
効果は得ることができたのでしょうか?
百瀬 そうですね。効果は「無くは無かった。」と、表現するのが正しいかもしれません。
鈴木 と、言いますと?
百瀬 1ON1の効果測定の基準をどこに置くかが非常に定性的かつ感覚的になってしまうので、
目に見えた効果というのは図りづらいんです。
分かりやすい効果を上げるとすれば、
『びっくり退職(=急に辞意を表明される退職)』は、格段に減ったという事ですね。
ただ、本来の『育成』という目的を満たす効果かと言われれば、微妙ですよね。
鈴木 確かに。

 

全社『1ON1』の効果はいまいち

鈴木 百瀬さんが個人的に運用していた時は効果を感じられていましたよね。
やはり、全社で実施するとなると、得られる実感はまったく違うものですか?
百瀬 まったく違いますね。1on1の対象となる部下にもさまざまなレベルがありますし、
必要としているコミュニケーションが違います。
また、上司側にもマネジメントにおけるそれぞれの持ち味があり、
結果、1on1の目的や求める効果がさらに曖昧になっていったというのはあると思います。
鈴木 そうですよね。

 

『1ON1』が、次第にコントロール不能に

鈴木 因みに、1ON1を受ける対象がマネージャー職の社員以外にも拡大したことは
何か影響ありましたか?
百瀬 実施対象の拡大によって、1ON1で話すべき内容が多様化したという事があります。
そうなると、1ON1の際に「こういう話をすれば、対象者は成長する」という
ある意味、明確な解がなくなってしまったわけです。
鈴木 つまりは、1ON1のクオリティ自体が実施する側(マネジメント層)の
スキルや経験に依存する性質へ変化してきたわけですね。
百瀬 そうですね。そして、クオリティをコントロールしないと、業務相談の時間だけに使ってしまったり、単なる雑談で終わってしまうケースも見受けられるようになりました。
こうなると、おおもとの『育成』という目的と手法がマッチしてないですよね。

ただ、社員も300名を超えてきたあたりから、一人の上司が担当する1on1対象者が10名超える場合が出てきたり、社員が多様化していきましたので、社員のレイヤーによっては必要なコミュニケーションが違ってきたりしました。
そのような組織の中で管理なく1on1を制度として置いてしまうと制度のための制度になりがちですよね。結果、大事な顧客満足や事業運営のための時間を割いてまで1on1をやるのが上司の仕事となってしまうと本末転倒です。その状況を全社画一的な制度のままでクオリティを管理していくのは無理が出てきてしまいました。

鈴木 それはそうですよね。
百瀬 ただ、個人ごとに話す頻度が多いことで、相談しやすくなった、
という『心理的安全性の確保』など、育成にはつながらないものの
副次的な効果はあったんですけどね。でも、それは1on1だけが手法ではないし。
それこそマネジメントの担い手によりさまざまな手法があるかなと。不定期にランチや飲み会とか、レクにいくチームもありますしね。
鈴木 なかなか、育成には繋がっていかないわけですね。

 

3.なぜ、『1ON1』は廃止されたのか

鈴木 お伺いした中で、なかなか『育成につながる具体的な効果が得られなかった』というのが
今回、1ON1制度の廃止に至った理由の根本かとお見受けいたしましたが、いかがですか?
百瀬 そうですね、鈴木君の言う通りです。
社員の貴重な時間や人件費、場所代をかけてでも、運用していく意味はあるのか?
あらゆる投資に対して、『社員の成長』という効果の採算が取れているのか?
そういった観点の元、思い切って今回の1ON1廃止に至ったわけです。
鈴木 なるほど、因みに制度廃止を検討する中で、
廃止することによるデメリットは何か想定されましたか?
百瀬 特にありません。制度の「廃止」はしますが、「禁止」ではないので。
育成やチーム基盤強化のために効果的と思われる
1対1のコーチングや信頼関係構築は上司側判断でやってほしいと。
ただ、お互いに貴重な時間と場所をとってまで実施するわけですから、
やるのであればちゃんと目的を明確にして意思をもって実施してほしい、という考えです。

鈴木 因みに、今後の社員の育成に関して、お話しできる範囲で教えていただけますか?
百瀬 社員育成は今年1年の最優先事項として置いていますが、
ビースタイルが大きな転換期ということもあり、
より高いレベルに社員が成長できるよう、これから具体的に考えていきます。
1ON1にフォーカスした話で言うと、全社制度としては廃止しましたが、
今後、人事ポリシーと紐づけたなかで、対象者を絞って直属の上司だけでなく
ナナメの上司などを含めたプログラムの運用は検討しています。

 

もし、『1ON1』を全社で制度化する前に戻れたら

鈴木 『1ON1』を全社で制度化する前に戻れるとしたら、どうしますか?
百瀬 社員の『育成』を目的に置く中で、
『そもそも組織・事業・社員など、具体的にどういう状態を目指したいのか』を
明確にすることが1つと、実施対象を全社員にするかどうかを
目的に沿って検討する事の2つですね。
そうすると、1on1の手法一つではなく、他の方法もからめながら、
より効果的に運用できると思います。
鈴木 なるほど、どちらも今回の失敗から学んだことですね。
百瀬 そうですね、1ON1はうまく運用できれば、
社員の『育成』に繋がる有効な手段だとは感じました。
今回の失敗を生かして、今後も社員の育成に力を入れていこうと思います。
鈴木 ありがとうございます。

 

4.おまけ

ビースタイルの鈴木です。

記事をお読みいただいた方からのアンケート内容で、
『人事制度の失敗などはあまり公表されない』とのアドバイスを頂きまして、
今回は弊社の「制度廃止」にフォーカスをして、お届けしました。

確かに、「失敗から学ぶものは多いよなあ」と思いながら、
失敗を前向きにとらえている、自社のスタンスが知れて、
個人としてもいい学びになりました。

今後も、読者の皆様の気になることにフォーカスしてまいります!
アンケート回答も、ぜひぜひよろしくお願いします!

 

皆様へのお願い

所要時間2分ほどの、簡単なアンケートにご協力いただきたいです。
※個人情報の取得は一切致しません
アンケートはこちら>>

【ご回答いただいた方々へ】
貴重なお時間とご意見を頂き、誠にありがとうございます。
大変参考になりますし、読んでいただいた感想までいただき、
さらなる記事制作の原動力になっております。
 

次回記事の告知

次回の記事配信は、2月末を予定しています。

内容はなんと、元編集長の伊藤愛へのインタビュー記事で、
産休復帰社員のリアルにフォーカスしてまいります。

是非ご覧下さいませ。

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記事担当ライター

鈴木 裕詠

高卒編集長