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2018/05/01

イベントレポート:優秀な人材を採る(前編)〜優秀な若手人材の採り方、活かし方〜

優秀な人材を採用・活用するために、企業の人事はいったい何をすればよいのか。
2018年2月28日、サイバーエージェント取締役・人事統括の曽山哲人さんをお迎えし、
会長の三原と「優秀な人材の採用と活用」について語っていただきました。
そのイベントの模様をお届けします。

【登壇者紹介】

曽山哲人さん
曽山哲人さん
株式会社サイバーエージェント 取締役・人事統括
上智大学卒業後、伊勢丹に入社。紳士服配属とともに、通販サイトの立上げに参加。
1999年サイバーエージェントのネット広告の営業担当として入社。 営業統括に就任。
2016年より現職。
三原邦彦
三原邦彦
株式会社ビースタイル 代表取締役会長
芝浦工業大学卒業後、インテリジェンスに入社。
2000年同社子会社のECサーブテクノロジー(のちに統合)の代表取締役に就任。
2002年ビースタイルを創業し、2017年より現職。

 

「優秀さ」の基準は、「セルフイメージ」と「変化対応力」の高さがポイント。


― まず、最近、求められている「優秀さの基準」について、それぞれのお考えを聞かせてください。

三原 優秀さの基準はただ1つ。「セルフイメージの高さ」だと私は思っています。「車の運転」にたとえると、わかりやすいかな。F1ドライバーとして運転するのも、街中で日常的に運転するのも、どちらも「車を運転する」ことには変わりないですよね。「やれば意外と簡単にできるもの」というのはちょっとクセ者で、できたとたん、満足して終わってしまう方が多い。そうではなく、単に車の運転ができるだけでは満足せずに、「F1ドライバーのようなトップレベルの走りを目指す」といった、高いセルフイメージを持ち続けられることが優秀さだと考えますね。
曽山 なるほど。高いイメージ力を持って行動できる人が、優れた人材ということですね。

 

優秀さを見極める、意外と簡単な方法

三原 料理もそうです。家庭料理だけにとどめておくのか。あるいは、普段から「世界中の要人に食べに来てもらえるようなかっこいいシェフになりたい」というセルフイメージを持って仕事をするのとでは、実際、かなり変わってきますよね。
会社として、メンバーそれぞれが与えられた役割を果たしながら、ひとつのゴールを目指す中で、ビースタイルでは「自分の職種に対するセルフイメージというものを、どのレベルで持っているのか」という意識の高さを、優秀さの基準にしています。
曽山 ちなみに、相手のセルフイメージを理解しようとするうえで、うまい聞き出し方や効果的な質問などはあるんですか?
三原 面接では「10年後はどんな姿になっていると思う?」といった質問をよくしていますね。男子学生に投げかけると、目をキラキラさせながら、「メンバーを率いて・・・」と話し出すんです。するとこちらも、すかさず「それはどんな自分なの?」と合いの手を入れて、さらにかっこいい自分・・・それも「会社で活躍しているかっこいい自分」をイメージさせるように誘導すると、意外と簡単に引き出せますね。
曽山 なるほど。「10年後のかっこいい自分」を語らせるというアプローチ、いいですね!
三原 「新規事業をやって、社会に影響を与えられるようなビジネスをしたいです!」と熱く語ってくれるのを聞くのは、嬉しいものですよ。
曽山 確かに。今、お話を聞きながら、僕も面接でよく聞く質問を1つ思い出しました。それは、「10年後、めっちゃ活躍している社員ということで、雑誌に取材されたら何て書かれたい?」と。みんなけっこう考えながら、セルフイメージを話してくれるんですよ。
三原 なるほど、それはおもしろいですね。

 

退職率30%、失敗から導いた採用方針

曽山 あと、それとは別にもう1つ。サイバーエージェントでは、「会社に合う人は優秀」という観点をすごく大事にしています。「会社に合う人は優秀」という採用側のスタンス。これは創業者の藤田(代表取締役社長)の「新卒採用はすごい大事だから、自分たちと合う人たちを採る」という姿勢を続けていたのがすごく良かったんです。とはいえ、僕らもこれまで、優秀人材の採用では失敗も経験しているんですよ。
三原 差し支えなければ、お話しいただけますか?
曽山 2000年に上場後、2003年までの間、毎年退職率が30%近くまで達していたんです。当時、生え抜き社員の平均年齢が24-25歳。一方で、大企業から29-30歳ぐらいの幹部社員をたくさん採用していたんですが、実は大企業ではまだ管理職を経験していない年齢で。加えてネット業界の知識が乏しいということもあって、うまく生え抜き社員をマネジメントできず、結局、定着する以前に辞めてしまったり、中途採用した幹部社員とうまくいかなかったりと、若手社員までもが多く辞めていきました。ところがその後、それ以前に新卒で採っていた「うちに合う社員」たちが、すごいやる気になったんです。上が抜けてからのほうがむしろ伸びたように感じました。
三原 そうでしたか。
曽山 そんな彼らの姿を見て、「うちに合う社員」というのは、「変化対応力」が高い人材なのかもしれないと感じましたね。
三原 変化対応力、ですか?
曽山 はい。最近ですと、『LIFE SHIFT』という著書がベストセラーになり、人生100年時代と言われるなか、独学とか学習力というのがホットな話題になっていますが、何らかのカタチで「学び続けること」が大事かと。今の自分に満足せずに、変化し続けることを厭わない人というのが、どの職種でもすごく伸びるなというのは感じます。
三原 実は、「変化」=「成長」を指していたりしますよね。ですが、「変化すること=成長」と捉えている人が意外と少ないかもしれないですね。

 

学生の本質を捉える、もう一歩踏み込んだ質問

曽山 そういえば、最近の学生は「安定している会社」と口にすることが多いんですよ。「それじゃあ、安定している会社ってどういう風なもの?」と聞くと、即座に「潰れない会社」と返してくる。そこで、「今、成長していなかったら、安定じゃないから。つまり、変化を伴う成長こそが、企業の安定につながると思うんだけど、どうかな?」と問いかけると、けっこうみんなハッとするんですよね。
「安定」を求めるのは、変化を恐れて守りに入りたいからではなく、「変化=成長」を理解できていないだけ。「ちゃんとまっすぐに歩みたい」というピュアな気持ちに起因しているんですよね。
三原 なるほど。曽山さんのように、学生と真剣に向き合う姿勢が、サイバーエージェントの根強い人気の秘訣ですね。そう考えると、企業サイドも、真剣に自分たちの会社に合う人材を採用するということを、あまり意識していないように感じますが、どうでしょう?
曽山 そうかもしれないですね。自分の会社に合う人材を求めながらも、既存の評価シートを使っているところも多いんじゃないかな。僕も昔、そうでしたが、どうもしっくりこない。
三原 採用する行為自体が目的化してしまい、「なんのために採るのか」を見失ってしまうのでは?
曽山 確かに。僕らの採用基準はあくまで「素直でいいやつ」と絞ってからはうまくまわるようになりました。となると、まずは採用基準を明確にすることが大事ですね。
三原 なるほど、それはおもしろいですね。

 

優秀人材の定着には、彼らの成長意欲に応える「活躍環境」が必要。

― 採用した人材をいかに逃さず、「定着」させるか。こちらも人事戦略を打ち立てるうえで、大きなテーマになってくると思われますが、いかがでしょうか?

三原 「定着」において私自身が感じるところでいうと、先ほど申し上げた通り、優秀な人材は高いセルフイメージを持っているので、彼らの自己成長欲求を十分に満たす環境を会社が用意していかないと、やはりよそへ逃げていってしまいますよね。それこそ走り高跳びのように、彼らが望む目標設定のバーをどんどん上げていき、年次にこだわらず、どんどん飛び越えさせていく「活躍環境」の創出が、定着に結びつくのかなと感じています。
曽山 優秀な人材のための「活躍環境」をつくる、ということですね。
三原 まさにそうです! サイバーエージェントではどうですか?

 

先行投資で惹きつける、「新卒社長」「抜擢報酬」という考え方

曽山 おっしゃる通り、活躍できる環境がないとみんなすぐに辞めてしまうというのはありますね。特に若手に対しては、年俸などの処遇も含めて、競合他社に比べて負けているところ、勝っているところを客観視して、相対的にいい環境をつくろうとすごく意識しています。
三原 なるほど。年俸などの処遇という点でいくと、私たちも新卒の初任給を基本的に自由にしました。セルフイメージの持ち方や学生時代にやってきたことも含めて、どう考えても一律で給料を決めるのはおかしい。
曽山 SEのような専門職だけではなく総合職でも?
三原 はい。今年の4月入社から、まず1人。これからもっと増えていくと思います。
曽山 三原さんがおっしゃる活躍環境というキーワードは、採用においてはものすごく大事ですね。僕も13年間採用に携わっていて、毎年300-400人ぐらい面接するんですけど、特にここ最近、優秀な学生からは「成長」や「自己成長」を求める声を耳にします。具体的な質問としては、だいたい3つぐらいかな。1つめは、「2-3年目ぐらいの先輩に裁量権のある先輩がいるのか」。2つめは「配属や異動について」。そして3つめは、決断経験。「若くして自分で決めている感覚を持つことができるのか」、といった内容です。
三原 実際こうして伺ってみると、優秀な学生は「変化」を求めているんですね。変化自体が成長につながることを知っているからこそ、その会社の中で、能動的に変化を経験できるのか知りたい。なかでも、決断経験というのは「責任」が伴うじゃないですか。やっぱり優秀であればあるほど、責任を取りたいでしょうね。
曽山 とにかくデカイことをやりたい。
三原 それができるとちゃんとPRできているところが、優秀な若者を惹きつける一番のエッセンスなんですね。

曽山 最近では「新卒社長制度について教えていただけますか?」という質問を多く受けますね。これは制度ではなく、ネット業界だからこそ、たくさんベンチャーをつくっていて、新卒入社組の若手に社長を任せるという環境をキーワード化しただけですが、めっちゃ刺さったんです(笑)。
三原 確かに刺さりそうですね(笑)。
曽山 でもこれって、言い換えているだけなんですよね。それぞれの業界の良さや、うちの会社ならではの良さを表す言葉を開発するのは大切だなと痛感しています。毎年何か新しいことを打ち出していくことが大事だなとも思いますね。
三原 サイバーエージェントのような大きな規模の会社がまだまだ攻めているということですから、小さい会社はもっと攻めないといけないですね。会社が変化することで成長し、ひいては個人の成長にもつながる。そういうことですね。
曽山 はい。ビースタイルならではの取り組みとかありますか?
三原 最近、自己成長意欲に加えて、「自己表現欲求」にも着目していますね。そこで、自己表現欲求の高い人材に活躍できる機会をどんどん与えていこうと、「抜擢役割」と「抜擢報酬」を採用しました。
曽山 抜擢役割と抜擢報酬という言葉、初めて聞きました。なんですか、それは?
三原 やりたいことのビジョンが明確な社員に、望む役割とチャンスをあげちゃうんです。
曽山 報酬って、リアルにお金を上げるということですか?
三原 そうです。本来ならば、実績が伴った時点で報酬を上げていくものですが、最近は「ビジョンに挑戦するチャンスそのものに報酬を」と考えるように。プロジェクトを進めていくなかで、もし立ち行かなくなったら、そのときは報酬も下げるよとも伝えていますよ。ですが、それよりも、自分でハードルを設定してどんどん高く飛んでいきなさい、という思いが強いですね。

以上が、イベント模様の前編になります。

後編では、今後の人事戦略の大きなカギとなる、「優秀なミドル層人材」の採用と定着について
お届けします。

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